秋岡芳夫 『増補版 割りばしから車まで』 復刊のお知らせ

秋岡芳夫の出世作『割りばしから車まで』の増補版を、熊本県伝統工芸館40周年記念として復刊しました。『割りばしから車まで』は、秋岡芳夫の生活デザイン運動の原点であり、副題「消費者をやめて愛用者になろう!」は、その後の活動のスローガンとなりました。増補版では旧作の原稿に加えて、その後の10年間に新聞・雑誌等に寄稿した原稿を収録。全294ページの大変読み応えのある内容となっています。

増補版 割りばしから車まで

立ち止まったデザイナー、秋岡芳夫の宣言書ともいえる名著を復刊

秋岡芳夫の出世作『割りばしから車まで』の10年後に発行された増補版を文庫化しました。同書は、秋岡芳夫の生活デザイン運動の原点であり、副題「消費者をやめて愛用者になろう」は、その後の活動のスローガンとなりました。増補版では旧作の原稿に加えて、その後の10年間に新聞・雑誌等に寄稿した原稿を収録。全294ページの大変読み応えのある内容となっています。

復刊によせて

本書は秋岡芳夫先生が1971年に書いた『割ばしから車まで』の増補版として、1981年に出版されました。その翌年の1982年、秋岡先生の監修によって熊本県伝統工芸館がオープンしました。

私が『割ばしから車まで』をはじめて読んだのは二十代の、工芸館の職員となったばかりの頃でした。「工業デザイナーって、料理から街のことまで、こんなに幅広く物事を考える職業なのだな」と感心したことを覚えています。

その後、秋岡先生と仕事で関わるようになり、工芸館の展示構想や建築設計に、この本の内容が生かされ、実践されていることがわかりました。例えば、二階に上る階段の手すりは、地元の鍛冶屋が金属を打ち叩いて作ったものです。また、展示台は子供の目線でも見やすく、実際に触れることのできる62センチの高さ。秋岡先生の隅々まで行き届いた気配りと、職人技の融合に感嘆したものです。

このたび、当館の開館40周年記念として本書が復刊されることになり、40年ぶりに読み返したところ、身につまされるところが多々ありました。特に第二章の「悩める現代の物づくり」の中で書かれている、「つくりすぎ、集まりすぎ、使いすぎの公害」は、私たちの社会がいまなお抱えている課題であり、それを50年以上も前に秋岡先生が予見していたことに驚きました。

今日のデジタル情報化社会の中で、人間の感覚や体感が生かされる余地はどんどん少なくなっています。このままでは、人間の手で作り出した道具が持つ魅力や、生活の知恵が消えてしまうのではないでしょうか。本書の副題である〝消費者をやめて愛用者になろう!〟は、環境問題に直面している現代人へのメッセージとして、しっかりと受け止める必要があると痛切に感じています。

最後に、記念出版に際しまして御尽力いただいた、モノ・モノの菅村大全さんをはじめ、関係者の皆様には心より感謝申し上げます。

熊本県伝統工芸館アドバイザー 坂本尚文

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お詫びと訂正(2022/10/21更新)

弊社より2022年6月に発行しました『増補版 割り箸から車まで』につきまして、以下のページに誤りがございました。読者の皆様並びに関係者の皆様に謹んでお詫び申し上げ、ここに訂正いたします。

・56ページ10行目
(誤)ここの着い職人たち →(正)ここの若い職人たち
・276ページ1行目
(誤)大工織 →(正)大工職
・289ページ12行目
(誤)アドイバザー →(正)アドバイザー

著者プロフィール

秋岡芳夫

秋岡芳夫 (あきおか・よしお)

1920年熊本県宇城市生まれ。東京高等工芸学校(現・千葉大学工学部)卒業。1953年にKAKデザイングループを設立。1970年にグループモノ・モノを結成。1971年に著書『割り箸から車まで』を上梓。消費社会の到来にいち早く警告を発し、“立ち止まったデザイナー”を名乗る。「消費者から愛用者へ」「身度尺」「コミュニティー生産」といった持論を展開し、日本人の生活風土に根ざしたデザイン運動を推進した。東北工業大学工学部教授、共立女子大学生活美術学科教授などを歴任。1997年死去(享年76歳)。

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