白木の器作り・その8「丸太の製材・半割と板作り」

秋岡芳夫の盟友、時松辰夫(アトリエときデザイン研究所代表)に師事した木工家・有城利博さんが、白木の器の作り方をレクチャーする連載企画。今回は山から運び出した丸太を板に製材するまでの工程が紹介されています。

文: 有城利博(木工家・ありしろ道具店代表)

こんにちは、ありしろ道具店の有城利博です。前回のブログでは丸太の運び出し作業の様子を紹介しました。今回はいよいよ、丸太の「半割」と「板作り」の作業の実際を紹介します。この工程は危険をともないますので、工房をシェアしている仲間と協力して進めていきます。使用する帯鋸についても、刃がしっかり切れるものであるか、割れやブレがないかチェックして、事前に整備しておきます。

丸太

今回板にした材料はアンズ、ホオ、ヒノキの3種類です。まずは丸太を、芯の通るラインで半分に割る作業(半割)を行います。板に芯が通っていると、そこから割れが生じやすくなります。それを防ぐために芯を抜くのです。製作するものを想像し、木目を見て半割をする方向を考えるのですが、それ以上に安全性を考慮し、丸太が一番安定する方向で、両木口の芯を通るラインを引きます。

半割り作業

丸太は重さがありますし、平らな部分がないので安定しません。しかも木が曲がっていたりねじれていたりすると、刃がかんだり暴れたりします。そのため半割作業をするときは、必ず2人で作業し、帯鋸の後方で丸太を支えてもらいます。「慣れているから大丈夫」などど思わず、一人で作業することのないように気をつけています。

半分に割れた丸太

丸太が半分に割れました。外からみるとわかりませんが、内部は水分がまだたっぷり染みこんでいます。とても危険な作業ですが、この木肌が現れたときは毎回、感動してしまいます。今回もはじめて使うアンズの赤みや大好きなホオの緑色に心おどる気分です。

丸太の端を切り落とす

次に芯の部分を抜いていきます。安全のため、半割した丸太の端を切り落とし平らな部分を作ります。

板を作る

板を作る工程はガイドを使うことで、板の厚みが揃い安全性も高まります。まずは芯が含まれた部分を10-20mmほどのピッチで板に挽きます。この芯の入った部分は、木目がまっすぐな「柾目」の板ができ、曲がってしまうと困る箸などの製作に適しています。

板の厚みを整える

芯が抜けたら、あとは製作するものにあわせた厚みに挽いていきます。今回は小さめのお椀を製作するために60mmの厚さに挽きました。さらにまだ厚みが残っていたので、40mmの厚さに挽き、お皿の材料とすることにしました。残りの端の部分は、薪ストーブの燃料として備蓄します。

厚みを整える

お椀やお皿を製作するときは、水分を含んだ生木を、そのまま木工ろくろで荒削りをします。しかし、次の工程になかなか進めない場合や箸の製作など材を乾燥させたいときもあります。その際は板と板の間に湿気がこもらないように、桟木をはさんで積んでおきます。

次回は板にした材料を使ったお椀の荒削りのテクニックについて解説したいと思っています。引き続きよろしくお願いします。

著者の紹介

有城さん

有城利博(ありしろ・としひろ)

木工家 ありしろ道具店代表

1974年福井県生まれ。東北大学文学部卒業後、新潟県で家具製作に従事。2005年に伊豆へ移住。NPO法人伊豆森林夢巧房研究所で、木工デザイナー・時松辰夫氏に木の器作りの手ほどきを受ける。2011年にありしろ道具店を設立。地元の旅館や飲食店向けに業務用の食器やテーブルウェアの製作を行う。
ブログ:ありしろ道具店

※有城さんが白木の器に使用している木工塗料は、「木固めエース普及会オンラインショップ」で購入できます。

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