こんにちは。ありしろ道具店の有城利博です。
前回、ウレタン塗装(木固めエース・プレポリマー)で使用する道具について書かせていただいたところ、空調を含めた塗装場の環境づくりに関してお問い合せがありました。今回はそのことについてまとめてみます。
私が使用しているシェア工房には、木工作業場とは区切られた塗装室があります。木工作業中は木の粉が舞います。塗装作業中だけでなく、塗料乾燥中にホコリが塗面に付着することを避けるためにも、できれば専用の部屋をもうけたいものです。
塗装室は外気を取り入れる簡易的な部屋のため、冷暖房の設備はありません。冬の季節だと、スプレーガンを持つ手が凍りそうになるくらい寒いですし、真夏は汗だくで塗装をしています。ただ、湿度が高いと塗装に悪影響が出るため雨の日はできるだけ塗装を避けていますが、どうしてもという時には塗装前に除湿器をかけて湿度を下げています。
塗装時は塗装室のドアを閉め、排気ファンを使い換気をしています。塗装室の窓の隣に給気口を設けています。ホコリ対策のフィルターには布団のシーツを使用しています(下写真の窓枠右側がシーツ)。
排気口は煙突のような作りになっていて、その途中に排気ファンがあり、空気は下から上向きに流れるようになっています。そのため塗装対象から外れた塗装ミストは塗装室内を舞うことがなく排気口の方に流れ、煙突の下の方に付着するか工房付近の地面に落下し、空気だけが煙突の上部から排気されます。そうすることで空気の流れを作り、作業者の安全対策をして、しかも工房の外に塗装ミストを排出することを防いでいます。
塗装室の排気口を外から見ると煙突のような作りです。この途中に排気ファンがあります。年末には排気ファンと煙突内部に付着した塗料を取り除く大掃除をしています。
ここまでの塗装設備を個人の作り手が整えるのはなかなか大変です。この工房は最初にNPO団体が用意してくれた設備を、そのまま仲間3人でシェアしているので、本当に助かっています。
塗装室には一枚のメモ書きがずっと貼られています。時松辰夫先生のメモです。
「流体力学」という難しい言葉から始まりますが、空気の流れを読むという点は塗装室の環境づくりではとても重要なことです。その環境づくりから、作業の動作、作業効率、そして「美」を求めるところまでがこの一枚にまとめられています。この一枚のメモを塗装のたびに読み、自らの行動を確認しています。なかなか進歩しないのですが……。
時松先生にはいろいろ大切なことを教わりました。 毎年年末に工房で餅つきをするようになったのも時松先生の一声からです。毎日頑張ってくれた機械ひとつひとつに鏡餅を飾り、お世話になっているご近所の方々にお餅をふるまうことで感謝の気持ちがうまれ、よい関係が築けます。今では年末に餅つきをしないと、年を越した気がしないようになりました。
今年も残すところあと数日となりました。工房の大掃除と餅つきが一年最後の大仕事です。9月から始まったこのブログ記事、読んでいただきありがとうございました。来年には器づくりの記事も投稿しますので、引き続きよろしくお願いします。それではよい年をお迎えください。
著者の紹介
有城利博(ありしろ・としひろ)
木工家 ありしろ道具店代表
1974年福井県生まれ。東北大学文学部卒業後、新潟県で家具製作に従事。2005年に伊豆へ移住。NPO法人伊豆森林夢巧房研究所で、木工デザイナー・時松辰夫氏に木の器作りの手ほどきを受ける。2011年にありしろ道具店を設立。地元の旅館や飲食店向けに業務用の食器やテーブルウェアの製作を行う。
ブログ:ありしろ道具店
※有城さんが白木の器に使用している木工塗料は、「木固めエース普及会オンラインショップ」で購入できます。