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「提案ー関係のデザインを、会議デザインシステムで」|モノ・モノ - Part 7

「提案ー関係のデザインを、会議デザインシステムで」

モノ・モノの前身となった「104会議室」について、秋岡芳夫が1971年にデザイン誌『工芸ニュース』に寄稿した原稿のアーカイブ。「デザイナーの提案活動の無駄を省くためにも、デザイナーの主催する会議室を持とう」という提案のもと、生産的な会議のあり方が詳細に検討されています。

文: 秋岡芳夫(工業デザイナー)

スライドの使用法で効果的な使い方を2~3紹介しておこう。

●スライドで本を読もう。

会議の初めの頃に会議参画の全員の頭の中に、これからやろうとする問題についてのなるべく具体的で視覚的な資料を記憶させておくことが必要である。言葉は不完全なものである。特にデザインに関する議論を言葉だけでたたかわしていると、お互いにまったく違った物を想像しつつ話をし合っている場合がよくあるものだ。同席者が、スムーズに具体的で視覚的に話しを進めるために一番いい方法は、全員が同じ物を一緒にたくさん見てしまうことだ。たとえば子供部屋に関するあるプロジェクトをこれからやろうというのなら、まず子どもの部屋と子どもの生態と子どもの遊びなどの本やスライドや資料をもってきて、それを全部スライドにする。何百枚になってもかまわないから全部スライドにしてしまう。そうしてそのスライドを会議の第1日目にみんなで一緒に、ガヤガヤいいながら見てしまう。(この作業は、皆でもちまわりで読めば数日かかる本読みを1~2時間で済ませる効果がある。)第2日目には、それぞれが何かの意味で注目したスライドを摘出するためにスライドをもう一度見てみる。そしてつぎに皆が選び出したスライドを、自分で自分なりのあるタイトルをつけて編集して写して見る。この編集しては写すことを面倒でも全員でやってみる。そうすると、全員が一回づつ写し終わったときには、だれが何を考えているのか、だれが何をやりたいと思っているのか、あるいは他の国や他のメーカーがいままでどんな風なことをすでにやっているのかが極めて明瞭に、しかも具象的に理解できるのである。会議に先立ってみんなで本を読むこと、そして一緒に読むこと、できたらお互いに解説をしたり、見解や印象を述べながらスライドで本を見ること、このやり方は造型に弱い人達と造型に強い人達が一緒に造型問題を論じ合うための、絶対必要な準備作業だといっても過言ではないと思う。

●スライドプロジェクターで提案しよう。

通常われわれデザイナーは図面かレンダリングかモデルかで自分の案を提案する。現寸大のモデルでの提案ならいいけれど、小さく描いたレンダリングとか、図面での提案はこの手の会議室では禁止した方がいいと思っている。私の経験では営業マンの70%は図面恐怖症である。自分達は図面が読めないと信じ込んでいる。会議の席で図面が配布されると、解ったような顔をして見ているけれど、本当はほとんど解っていないのである。私のつき合った範囲では三面図を正確に読める営業マンはほとんどいない。正面図と側面図の関係はかなり読めるけれど底面図と正面図の関係はほとんど読めないのが実情である。
だから、営業マンの同席する会議に青写真を持出してはいけない。さらにまずいことに彼らは縮尺の観念がない。図面はもちろんだがレンダリングや構造分解図でも縮尺のものを彼らの前に提出しないことだ。そんなときにスライドを使うといい。いっそ、提案はすべてスライドにしたらいい。レンダもマンガ式に書いたアイデア図もかげをかきこんだ正面図も、みんなスライドにして現寸大に投影して提案するといい。どうしても図面で投影する必要がある場合は、さっき説明したマルチ投影の要領で、エンジニア用の寸法の入った図面と、営業マン用の等角投影図やスケッチを同時に写したらいい。図面を回覧して、営業マンの恐怖心をよび覚ましてしまったらもうその会議は失敗である。

●光半導体フィルムを利用したスライド作製装置

スライドはいろいろ効果的な利用法があるけれど、現像を外注することの時間的な不便さと、秘密保持の問題が残る。便法として私の採用している方法は、カラーフィルムや白黒の反転フィルムを用いないで、パンクロFまたはミニコピーフィルムを用いる方法である。画像が黒白反転する弱点があるから、陰影をつけたスケッチの複写には不適当だが、線描のスケッチや図面や文字(含写植)には便利である。自家現像で1時間あればフィルムが得られる。もちろんスライド枠に貼付してから投映する。もし写真現像に自信があるなら、暗室内で反転現像も可能である。
だが、目下N社で開発中の光半導体フィルムを応用したスライド作製機だと、枠のついたスライドが30秒で、でき上がる。これなら機密保持もできるし、撮影や現像の際まったく専門的知識や技術を必要としない。 これがあれば、会議の席で突然提案された文章や図面や資料もすぐスライドで投映して全員で同時に検討することができて大変便利である。ネガでもポジでもボタンの切換えで選択できる便もある。近々発売されるだろうと思う。ついでながら同じフィルムを使ったマイクロフィルム装置も試作が完了しているから、これも市販されたら資料の整理、検索、コピーが大変楽になると思う。

●参考品・サンプル

スライドによる資料に不向きの資料、たとえばその質感や色彩の微妙なニュアンスが参考になるものとか、操作や分解組立に特色のある商品などは、なるべくその現物を会議室の備品として数多く取揃えておくことが肝要である。
前記の会議室用の茶を呑む道具などに、私が不必要と思われるような配慮をしたのは、常用する道具をそのまま生きた参考品としたかったからにほかならない。茶の道具も灰皿もみな愛用品のサンプルであり、耐久品のサンプルであり、物と物の関係のサンプルであり、物と物と人間との微妙なかかわりあいの見本のつもりなのである。これらのサンプルの保管のためにかなりの大きさのサンプル室が必要になるだろう。サンプルは多ければ多いほどいい。会議室の月々の収入の15%~20%を参考品購入費にあてる必要があると私は思っている。なぜなら、このような会議室での最高の所員はこれらの参考品達だからである。この忠実な参考品達にたくさんの給料を支払うことは当然のことなのである。

●その他、必要と思われるもの

オーバーヘッドプロジェクター、ビデオテープ、スライド編集器(編集台)、35ミリカメラ2台(カラー用、白黒フィルム用、いづれも接写可能なもの、一眼レフ・マイクロレンズつき)マルチストロボ、小型スタジオ、暗室、ステージ。
ステージは主として提案モデルや参考品を検討する場として用いる。天然光、蛍光照明、自然照明の切換装置があって、バックの壁の色彩は変更できることがのぞましい。通常参考品、モデル、スライド資料などの作製の際スタジオとしても使用できるはずである。

●会議室要員

ディレクターをつとめられる人間1人でいいはずである。その他に会議秘書1名とアシスタント若干で十分であろう。表現、考察、創案用のデザイナーは不要である。会議の内容によってデザイナーが必要なときは、IDデザイナーなりテキスタイルデザイナーなりに随時会議に加わってもらえばよいからである。そしてデザインのワークは会議終了後各デザイン事務所に持ち帰り次の会議までに作業を完了すればいい。会議参加した技術者が技術的問題の処理を自分の会社に持ち帰り、営業マンが課題を次の会議までに解答するように……

これから、日本の産業界や市民社会はどのようにかかわりあいながら変化してゆくのか? 私は脱工業化社会という言葉は知っているが、それがどのような社会であるのかを知らないし、どのようなプログラムを組んで脱工業社会に脱皮してゆくのか、私には想像がつかない。工業化された社会が脱工業化へ移行する経過は、多分昆虫の脱皮のような瞬時のものではないはずである。その間、それもかなりの長い間、工業化社会と脱工業化社会が隣り合うだろう。生産指向型の産業と生活指向型の産業とが、生産工学と循環工学が、また利潤追求行為と脱利潤追求行為とがこの狭い日本のあちこちに同居するだろう。そしてその間私達が属している産業界にも、立場やいきさつやイデオロギーの違ういろいろなグループ活動がエゴイズムをむき出しにするだろう。このグループエゴイズムは社会秩序を乱すだろう。混乱した社会の生存競争に勝つために、それぞれのグループのエゴイズムはますます強くなるだろう。グループエゴの招くその混乱を軽減する方法はただ一つ、脱グループ活動しかないように私には思われる。

私がこのささやかな会議室のはたらきに期待しているのも実はそれなのである。脱グループ活動の場としてこの会議室に願いと望みをかけているのである。 脱企業家的企業家——人間味のある事業家——が一人や二人ならこの日本にいま、いることを私は信じたい。脱メーカー的メーカーの親爺がたくさんいることも信じたい。脱利潤的商社マン——市民によりよい生活をサービルしたいといっている男——を何人かすでに知っている。脱工業デザイナーや脱クラフトデザイナー的な男——世の中が、ほんとにいい社会だったらデザイナーなんかいらないのだ。と、そう本気で考えているデザイナーや、デザイン事務所の経営よりも日本の風景のよごれの方が心配で、使い捨てプラ容器のデザインを拒んでいる男——も知っている。 一人では手をつけられないぐらいの問題を抱えこんでいる男、グループエゴイズムの弊害に気づいた奴、これからの社会全体を心配している人間。 そんな連中がここに集まってくれたらなあと想うのが私の願いである。私もその仲間に入りたい。

出典:『工芸ニュース』Vol.39-No.1・1971年・工業技術院産業工芸試験所編集・丸善発行

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