秋岡芳夫の本

書棚

モノ・モノ創設者の秋岡芳夫は、暮らしや木工に関する多数の著作を残しています。このページでは秋岡本人、あるいはモノ・モノ関係者が執筆をした書籍だけを紹介しています。書評はモノ・モノ前代表の山口泰子が担当しました。残念ながらほとんどの本は絶版になっていますが、ネット書店を通じて古書を購入できます。秋岡芳夫の理念を次世代に伝えられるよう、モノモノでは著作集の刊行、もしくは電子書籍版の発行に取り組む予定です。
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暮らし・住まい

木 ── しらき

玉川大学出版 | 単行本 | 1977

木の命を絶たぬよう、切らずに斧で割って製材した、日本の木工の伝統、割木工(わりもっこう)のすばらしさを伝える良書。いい仕事のために道具を工夫し自作した職人の執念と、貴重な手道具の写真が美しい。なぜ和ダンスは桐が使われていて一段ごとのユニット構成になっているのか。なぜ鉄くぎを使わなかったのか、なぜ仕上げにサンドペーパーを使わなかったのか。たくさんの「なぜ?」から日本古来の木工の神髄が浮かび上がる。

住 ── すまう

玉川大学出版 | 単行本 | 1977

書名が「すまい」ではなく「すまう」となっていることからわかるように、住宅ではなく、暮らし方の諸問題をあつかった本である。根底にあるメッセージは、同じシリーズの『木——しらき』と共通する。加えて秋岡芳夫の他の著書ではほとんど触れられていない「灯り」の話、流行色とは関係ない、日本人の肌になじむ色彩の話などがあり、インテリア選びや服飾品の色選びにも本書が役立ちそうだ。

創 ── つくる

玉川大学出版 | 単行本 | 1977

この本には、いまはやりのクリエイティビティーやオリジナリティーといった言葉も、クリエイターという職業も登場しない。「創るとは人間の営みすべての中にある行為」だからだ。漬物も、包丁研ぎも、棚つり仕事も、かつては家庭にあった生活技術。そのすべてを企業とプロに引き渡してしまったのが現代。だから暮らしがつまらない。秋岡芳夫は主張する、「楽しい創を取り戻せ、ホモ・ファーベル(工作人間)よ!」と。

工房生活のすすめ

みずうみ書房 | 単行本 | 1979

私たちのほしいモノを工業も企業も作れないなら、どうすればよいか。「まず自作しよう」。「次に里に住む人々に作ってもらおう」と秋岡は語りかける。前半では秋岡の工房住宅の日々を伝える。後半は、山農村の過疎化対策のつたなさを皮肉りながら提案する「一人一芸の村」計画の話が中心。「ねえ、村長、チップ屋に売ってる雑木を器にしませんか、裏作で」。岩手県大野村(現・九戸郡洋野町)の学校給食器はこうして生まれた。

暮しのリ・デザイン

玉川大学出版部 | 単行本 | 1980

これまで取り上げてきた道具や話題を生活という尺度で測り直すと、また別の物語や提案が出てくるのが秋岡芳夫の発想のすごさだ。「国鉄が捨てたD51型蒸気機関車(愛称:デゴイチ)を拾って、薪を焚いてロクロや帯鋸じゃんじゃん回して木工やって、過疎の地の村おこしやろう」という提案にはじまって、話題はエネルギー問題から包丁の柄のデザインまで縦横無尽に広がる。裏作工芸の発想もこのあたりからはじまった。

暮しのためのデザイン

新潮文庫 | 文庫本 | 1984

本書は前編「見直したいもの」と後編「考えてみたいこと」の2章からなる。前編は“身度尺”の話。かつてどの民族も手や足、腕の長さなどを基に寸法を測った。日本に古くから伝わる道具の使いやすさの秘密、身度尺による関係のデザインを写真やイラストで解説。後編は「木かスチールか、リビングダイニングの椅子やテーブル、身近かにある最近の道具をちょっと考えると、ずっと快適な暮らしができますよ」という提案が中心。

新和風のすすめ

佼成出版社 | 単行本 | 1989

秋岡芳夫が手がけた最後の著書。自然と共存してきた農山村の暮らしを例に出し、住まいも食事も着るものも、めいめい自分に合うよう工夫して作ったり使ったりする、そういった日々の営みの集積が日本の生活文化の伝統だと説く。元来クリエーティブだった日本人の暮らしをおさらいして、新しい暮らしを考えよう。それが秋岡がとなえる「新和風」。国際化のはじまったいまだからこそ読み直したい一冊だ。

割り箸から車まで

復刊ドットコム | 新書版 | 2011(復刻版)

「消費は美徳」と経済成長を謳歌(おうか)していた日本人に秋岡芳夫が最初に投げかけた過激な提言集。車、電化品、生活雑貨……。「次々と買い換えて使い捨てる暮らしをさせられていませんか」「消費者をやめて愛用者になろう!」と呼びかけたこの提言には、真に豊かな暮らしを実現するためのたくさんの種がつまっていた。いくつかは発芽したが、多くは種のままだ。新しいモノ・モノがいつか発芽させてくれることを期待したい。

生活道具・食器

日常の食器 木と漆

文化出版社 | 単行本 | 1980

現代的な住空間で楽しく美しく使える漆器と白木の器を、豊富なビジュアルで紹介した“木器カタログ”。選定は白木の器を秋岡芳夫が、漆器を工芸評論家の内藤正光氏が担当。産地ものから作家ものまで、スタンダードなデザインの器やカトラリー、弁当箱を50点以上掲載。モノ・モノで取り扱いのある商品も多い。巻末には秋岡による「木の器とつき合って暮らしたい」と題されたと随筆と、内藤氏の「よい漆器とは」という随筆も収録。

サンレイライフムック1 木と木のモノ

三麗社 | 単行本 | 1980

本書が発行された1980年は、経済成長と工業化により達成した豊かで便利な生活を人々が謳歌(おうか)していた。反面、個人が生活の技術を失っていく時代でもあった。本書は木や漆などの自然素材から、プラスチックやアルミ、接着剤や乾電池といったモノにも対象を広げ、材料の基礎知識、使いこなしの方法など個人の生活技術を高めるための情報誌として企画・編集された。三麗社の倒産により、残念ながら4号で休刊となった。

サンレイライフムック2 漆と漆のモノ

三麗社 | ムック | 1981

本書が発行された1980年は、経済成長と工業化により達成した豊かで便利な生活を人々が謳歌(おうか)していた。反面、個人が生活の技術を失っていく時代でもあった。本書は木や漆などの自然素材から、プラスチックやアルミ、接着剤や乾電池といったモノにも対象を広げ、材料の基礎知識、使いこなしの方法など個人の生活技術を高めるための情報誌として企画・編集された。三麗社の倒産により、残念ながら4号で休刊となった。

サンレイライフムック4 食事とうつわ

三麗社 | ムック | 1981

本書が発行された1980年は、経済成長と工業化により達成した豊かで便利な生活を人々が謳歌(おうか)していた。反面、個人が生活の技術を失っていく時代でもあった。本書は木や漆などの自然素材から、プラスチックやアルミ、接着剤や乾電池といったモノにも対象を広げ、材料の基礎知識、使いこなしの方法など個人の生活技術を高めるための情報誌として企画・編集された。三麗社の倒産により、残念ながら4号で休刊となった。

いいもの ほしいもの

新潮社 | 単行本 | 1985

成熟しきった工業化社会に辛うじて残っている手仕事を紹介するエッセイ集。刃物用のダイヤモンド砥石を「手作り」している大工場、ポケットナイフを「機械で手作り」している親子鍛冶、一人一人に合わせて作る身障者用の椅子……。うれしい工作はこんなにある。健全な手作りとは、工作しながらの作業だと秋岡は説く。産業ロボットには作れない、いいもの・ほしいものを全36点掲載。実物の写真も豊富で見応え十分だ。

食器の買い方選び方

新潮社 | 単行本 | 1987

いい器にはどんな特徴があるのか。古い器にも新しいデザインにも共通する秘密を、目に見える形で説明したベストセラー。日本人が数百年かけてデザインしてきた、手に持つ器。重さがいい、サイズがいい、器と人の関係がいい、器と器の関係がいい、さらに銘々持ちという日本独特の習慣を含めて、いい器の秘密をさまざまな切り口で解説してある。見た目だけでなく五感も満足させてくれる器の選び方。直筆イラストも見どころ。

木工・ホビー

木工(道具の仕立)

美術出版社 新技法シリーズ | 単行本 | 1976

どんなにいい道具を買っても仕立てができなければ、使い物にならないのが木工の道具だ。素人がプロに負けないものを作りたかったら、まず道具を仕立て、プロ以上の工夫をすることが必要である。秋岡芳夫とその仲間たちが、長年蓄えたノウハウを基本から教えてくれる。そして素人だからこその強みは、楽しみながらゆっくり時間をかけて作ることだということも。ホモ・ファーベル(工作人間)のために書かれた本。

日本の手道具

創元社 | 単行本 | 1977

歯やつめが、食べたり、戦ったりするための道具として人間の体に生えてきたように、工匠の手には、体と一体化した道具がある。使い込まれた美しい手道具を収めた写真に、秋岡芳夫による詩のような解説がつく。後半は『室内』が1971-72年に連載した工房探訪記「道具拝見」を再収録。いい道具と、それを使いこなす、道具使いの心の記録。道具に関しては玄人はだしの腕前を持つ秋岡の取材記事は、並の記者ではおよばないほど奥が深い。

木工具・使用法

創元社| 単行本 | 1980

昭和10年代、日本の木工は、明治期に欧米から伝わった洋家具製作の技術も加わり、最も華やかに咲き誇った。当時トップクラスの技術者であり、都立工芸高校の教師でもあった吉見誠が編んだ大工道具の図鑑。類書は多いが、この本をこえるものは少ない。イラストも秀逸。復刻に当たって秋岡芳夫が原著にない道具の実物写真を加え、読みづらい道具名にルビをつけ、現代文に改めた。省かれた部分はない。当時の産業事情がわかる第一級の資料でもある。

サンレイライフムック3 木工と道具

三麗社 | ムック | 1981

本書が発行された1980年は、経済成長と工業化により達成した豊かで便利な生活を人々が謳歌(おうか)していた。反面、個人が生活の技術を失っていく時代でもあった。本書は木や漆などの自然素材から、プラスチックやアルミ、接着剤や乾電池といったモノにも対象を広げ、材料の基礎知識、使いこなしの方法など個人の生活技術を高めるための情報誌として企画・編集された。三麗社の倒産により、残念ながら4号で休刊となった。

木のある生活 つかう・つくる・たのしむ

TBSブリタニカ | 単行本 | 1984

文化財ではなく日常生活にある木の器や道具、住まいの作りから見えてくる日本の生活文化を考えた本。木を使い、木で作り、木を楽しんで来た日本人のエピソードが満載。秋岡芳夫が自力で建てた7坪の木造住宅。それを何度も建て増しして完成した「工房住宅」。刃物を研ぎ、槍鉋(やりがんな)を使い、竹とんぼを削る秋岡芳夫とその仲間たちの様子が実に楽しそうで、嫉妬(しっと)の念に駆られる読者がいるかもしれない。

木工入門 樹の器

講談社 | 単行本 | 1986

切ったばかりの生木はやわらかいから、素人でも楽に切れる。この性質を利用して楽しく木の器を作るためのハウツー本。鉋(かんな)やノミなど、扱いが難しい道具がいらないため、秋岡芳夫は「縄文木工」とも呼んだ。公園や街路樹の枝打ちの時、これはと思う枝をもらうといい。細い枝は杓子(しゃくし)に、太い枝は器になる。生木の特性、樹種ごとの特徴など、基礎も学べる、“グリーンウッドワーク”の元祖ともいえる手引書。

竹とんぼ夢中人

山海堂 | 単行本 | 1988

秋岡芳夫の竹とんぼに魅せられた人たちが、一緒に削りはじめて生まれたのが「竹とんぼ奇族」。挙げ句の果ては「国際竹とんぼ協会」まで作って、佐渡島やロサンゼルスまで遠征して飛ばしっこするなど、竹とんぼをとことん楽しんだ成果をまとめたのがこの本。それぞれ自慢の作品を能書きつきで紹介。極上ホビー、教えますとて、作り方、道具、工夫の数々を披露している。作り方やデザインが人それぞれ、個性があるのがおもしろい。

木工-指物技法

美術出版社 新技法シリーズ | 単行本 | 1993

秋岡芳夫の絶版本のうち、一番高値で取引されているのが本書。適切に仕立てられた刃物の成果が「もっともよく生かされるのが指物の技法」、「厳密な意味での指物の技術を一冊の本で述べることは不可能」という視点に立ち、「すべての指物の製作に共通する『はぎ』『ほぞ』『留』の技法をわかりやすく解説することにしました」と序文にある通り、イラストや写真を交え指物の基礎テクニックが懇切丁寧に解説されている。

竹とんぼからの発想 

復刊ドットコム | 単行本 | 2011(復刻版)

秋岡家の夕食は、いつも竹の子ご飯ならぬ竹の粉ご飯だった。なぜなら秋岡芳夫が食事の箸を取る直前まで竹とんぼ削りに夢中で、食卓が粉だらけになってしまうからだ。「握り飯と竹とんぼは、買うものではく作るもの」がモットーだった秋岡は、生涯に数千機の竹とんぼを手がけた。手が脳よりも先に考えて動くことが、本書で証明されている。驚異の竹とんぼの写真が満載され、愛好家でなくても楽しめる。

その他

デザインとは何か 伝統美と現代

講談社現代新書 | 新書 | 1974

こんなモノがほしい、こう暮らしたいという「思い」からデザインははじまる。工業化、経済効率万能の時代には、デザインに対する「思い」があっても、それが企業の手にわたると、暮らしはつまらなく、不自由になってしまう……。本書では、そうした実体験を秋岡芳夫がつぶさに語る。デザイン論についてデザイナーや評論家が論じても結果はむなしい。デザインの根源「思い」を忘れるなと、秋岡芳夫は語りかける。

あそびの木箱

淡交社 | 単行本 | 1982

北海道立近代美術館が1992年に開催した公募展の図録。彫刻家の流政之の言葉にヒントを得て、コンペ形式で募集、受賞作品が1冊にまとめられている。指物師、轆轤師、デザイナー…多彩な作り手が応募した。「箱」というテーマからこれほど多様な「思い」がなぜ生まれるのか。驚くばかりの作品群に秋岡芳夫がその「思い」を想像力豊かにふくらませて一冊の物語にしている。企画協力は秋岡芳夫、折原久左ヱ門、勝見勝、藤崎誠など。

いまこそ読み返したい秋岡芳夫の本
文:山口泰子(グループモノ・モノ)

先の戦争で焦土と化した東京で、まっさきに工業デザインを職業として数千点の製品をデザインしながら、木工に親しみ、古道具を集め、全国の地場産業を訪ねてまわったのが、秋岡芳夫だった。工業デザイナーが花形職業になったころ、手仕事の重要さを感知して、その再生に奔走した。全身がセンサーのような人だった。秋岡芳夫の本をいま読み返しても新鮮なのは、生活者の目でユーモアを交えてつづる物語が、21世紀の暮らしとモノ作り、その先にある未来を見せてくれるからだ。