店主からのメッセージ
文京区小石川の春日通りに面していた『一幸庵』が、道路計画の都合で現在の場所に移転したのは20年前。そのとき三階でギャラリーをやらないか、と誘っていただいたのが、深いご縁の始まりです。
日本の生活道具を取材して書くのを仕事にしていた身にすれば、ギャラリー作業は未経験。迷い迷う私に、弘前の五人のクラフトマンが手を差し伸べてくれました。この切っ掛けをつくってくれたのが、かねてより付き合いのあった須藤賢一さんでした。
時を経て昨年、須藤工房で目にしたのが今展主役の作品。須藤さんは持てる技を駆使して真面目に遊び、ときどき私を驚かせてくれるのですが、これは最新のビックリです。日頃ご紹介している“普段使いの漆のもの”から思えば異次元、立派すぎ。でも美しい、面白い、なんだか愉しい!
「本物のピラミッドの500分の1サイズのピラミッド」と、説明を聞きながら、私は分不相応なことを考え始めていました。ピラミッドの引き出しに水上さんのお菓子が盛り込まれたら…。お二人の快諾を得て、我がスペース20年目の贅沢、夢のような催しが実現します。
和菓子の世界の現在(いま)を、未来(あす)を案ずればこそ、確たる技のもとに、吟味した材料で納得のいくお菓子を一つ一つ手作りする人、また漆の世界の現状を憂いながら、コツコツと月日を掛けて、長く楽しく使ってもらえる津軽塗作りを目指し続ける人――遊び心も忘れない二人の職人の競演です。どうぞご高覧下さいませ。
須藤さんの実用的な器も少々展示いたします。 (髙森寛子)
会期中のイベント
一幸庵店主・水上力さんのお話会
「和菓子と季節・和菓子と器」
日時6月2日(土)15時〜16時
場所一幸庵菓房(一幸庵ビル2階)
参加費2,000円(茶菓子代含む)
定員10名(満員御礼)
開催場所
スペースたかもり 東京都文京区小石川5-3-15 一幸庵ビル302
東京メトロ・丸ノ内線 茗荷谷駅から徒歩3分